大人になってからの矯正歯科の注意点1
2017年2月22日歯並びがよいと、見た目がきれいで清潔感があるだけでなく、歯のお手入れがしやすく歯周病や虫歯などお口のトラブルを減らすことができるというメリットがあります。
歯の矯正というと子どもが行うイメージがあるかもしれませんが、メリットの多さから大人になってから矯正を行う方も増えてきています。しかし、大人になってからの矯正には注意しなくてはならない点もあります。
矯正を考えている方は、注意点もしっかりと理解した上で矯正歯科を選んで矯正を受けましょう。
虫歯や歯周病は治療してから矯正を行おう
矯正の前に、虫歯や歯周病はきちんと治療しておく必要があります。
矯正治療中は、ブラッシングが行き届きにくく磨き残しがどうしても増えてしまい、虫歯や歯周病になるリスクが増します。もともと虫歯や歯周病(歯周病になる手前の歯肉炎も)があるにもかかわらず治療せずに矯正を始めてしまうと、あっという間に進行してしまう可能性があります。
矯正治療中は、間食をしない、ブラッシング指導を受けて丁寧にブラッシングを行う、歯科医院で定期的にクリーニング(PMTC)を受けるといったケアを徹底することで虫歯や歯周病になるリスクが減らせます。
矯正治療中は普段以上に、歯と歯茎をいたわってあげましょう。
治療済みの歯がトラブルのもとになる可能性
大人になると、すでに治療した虫歯などがいくつかある方も多いでしょう。大抵の場合は被せ物といわれる銀歯や詰め物によって治療されているはずです。そうした治療済みの歯が多い状態で矯正を行うと、歯や歯茎を傷めてしまうリスクもあります。
治療済みの歯が多い方は歯科医師と相談の上、矯正を受けるかどうか慎重に判断するようにしましょう。
歯が痛くなる
矯正のための装置を装着して1週間程度の間、歯が痛く感じることがあるかもしれません。全く感じない方もいますが、食事のときに痛むなど歯痛が出てしまう場合もあります。
これは、矯正によって歯が動いている証拠なので心配する必要はありません。
また、通常は時間とともに痛くなくなっていきます。しかし、痛みで日常の生活に支障が出る場合などは痛みが出ている間だけ鎮痛剤を飲むこともあります。
歯の根が短くなる
「歯根吸収」という症状が出る場合があります。歯根吸収とは、歯の根が短くなることです。
矯正を行うからといって必ず出る症状ではありませんが、歯にいろいろな方向から力が加わることで歯が揺らされることによって起きます。
歯根吸収を防ぐポイントは、適切な矯正力で無駄に歯を動かさないよう技術の高い医師に矯正をおまかせするしかないため、専門医のいる矯正歯科を選びましょう。
口内炎になるリスク
矯正装置が舌や頬の内側に当たると、粘膜が傷つき口内炎ができてしまうことがあります。
当たる部分の矯正装置を粘土のようなもので覆い粘膜を保護する方法や装置を削ったり、カバーをしたりする方法もあります。
歯茎が下がる
歯根吸収と同様に、歯に無駄な動きが加わることによって歯茎が下がってしまうこともあります。これを「歯肉退縮」といいます。
特に、もともと歯周病などで歯茎が下がっている方はより歯茎が下がってしまい、歯の根が見えてしまうこともあります。
ほかにもブラッシングの力が強すぎることによって歯茎が下がることもあるので、ブラッシング指導をきちんと受けるようにしましょう。
歯がすり減る可能性
矯正装置を着けることによって、装置と歯が接触し歯がすり減ることがあります。また、歯のエナメル質に小さな亀裂が入ることもありますが、こういった症状は矯正をしなくても普段の食事やくいしばりなどでも生じることがあります。
痛みなどの自覚症状もなければ、特に心配する必要はありません。
知覚過敏になるリスク
矯正のための装置を着けた後や、交換したあとに歯がしみる場合があります。
特に冷たい水などを口に入れた時にしみやすくなることがありますが、通常であれば数日でおさまります。
しみ止めを塗ってもらうなど、長期間続くようであればその旨を伝えて対処してもらいましょう。
アレルギーのある方は要注意
矯正に使う装置に金属が使われていることがあります。金属アレルギーが心配な方は予めパッチテストを行ってもらうようにしましょう。
歯科医院以外の皮膚科やアレルギー科を紹介されることもあります。
違和感を強く感じるかもしれない
ほとんど目立たない矯正装置もありますが、やはり今までなかったものが口の中にあるため慣れるまでに違和感がでてしまう方もいます。
食事をするときや会話をするときに食べづらい、話しづらいと感じるかもしれませんし、発音がスムーズにできないこともあるかもしれません。特に、さ行・た行・ら行の発音に支障が出ることもあります。
慣れるまでの辛抱ですが、司会業など滑舌良く話せないと仕事にならないという方は注意が必要です。
矯正に時間がかかる
大人の場合、矯正を始めてもすぐに歯が動くわけではなく、歯の矯正されるスピードはとてもゆっくりです。そのため、通常1~2年程度の時間が必要になります。
また、歯や骨、歯茎の状態、噛み合わせや癖などによって、計画していた期間よりも治療する期間が長引く場合もあります。
後戻り
矯正した後も、歯は元の位置に戻ろうとします。そのため、矯正装置が外れたあとでも保定装置を着用して後戻りを防ぐ必要があります。
せっかく矯正したのに戻ってしまっては時間と費用の無駄になってしまいます。矯正装置と同様に医師の指示通りに着けるようにしましょう。
まとめ
歯を矯正することで美しく清潔感のある口元を手に入れることができます。しかし、大人が矯正を行う際には気をつけなければならない注意点があることもご理解いただけたはずです。
こうしたリスクを考慮しつつ、しっかりとカウンセリングをしてくれる専門医が在籍する矯正歯科を選ぶと安心して治療を進めていくことができるでしょう。
矯正には時間がかかるため、ある程度根気も必要です。勝手に装置を外したり、ケアをさぼってしまったりするのはトラブルの原因になり、治療期間を長引かせることにもなります。
自己判断は行わず、医師の指示を守りきちんと通院を続けるようにしましょう。