虫歯になりやすい歯・なりにくい歯

2020年9月3日

虫歯になりやすい歯・なりにくい歯

どの歯に虫歯ができやすいのでしょうか

こちらのコラムをご覧になっている方の多くは、虫歯を患われたことがあるのではないでしょうか。
虫歯を患った方は、ご自身の歯の何本に虫歯の治療の跡があるかをご存知ですか?
また、その虫歯への治療はどのような方法で行われたかを覚えていらっしゃいますか。
年齢によって多少の差はありますが、私たち人間の歯には「虫歯になりやすい歯」というものが存在しています。
この「虫歯になりやすい歯」の存在は、裏を返せば「虫歯になりにくい歯」も存在している、ということを意味しています。
では、どのような歯が虫歯になりにくい歯に当たるのでしょうか。

虫歯になりやすい歯の割合

虫歯に最もなりやすい歯の割合ですが、上下とも大臼歯が最も高い割合を占めています。
そして次に、上あごの小臼歯、前歯部、そして下顎の小臼部…という風に続いていきます。
歯科医師は、どの歯に虫歯ができたとしても虫歯の治療を行いますが、その中でも特に歯科医師が虫歯の治療を行う機会の少ない箇所、というものが存在します。
その箇所とは、下の前歯の部分です。
皆さんの下の前歯には虫歯の治療の跡がありますか?
この下の前歯は、よほど乱れた食生活をしていない限り、虫歯が発生することはほとんどない、とも言われております。
義歯をお使いの患者さんであっても、上の歯は歯が残っていなくても、下は前歯が残っている、という方も多いです。
このように下の前歯に虫歯が少ないのは、人体の構造上の理由があります。
さて、それはいったいどのようなものなのでしょうか。

人体の構造からみる虫歯の罹患状況の違い

三大唾液腺とその効果

私たちの口の中には三大唾液腺という大きな唾液腺があります。
これらのうちの二つは、顎下腺と舌下腺と呼ばれ、これらは舌の下部にあり、唾液の出口である開口部が存在します。
人間は食事を行うと、口の中のpHが下がり、これに伴って酸性の値を示します。
口内が酸性の状態が続くと、やがて歯が溶けてしまいます。
唾液は、口の中のpHの状態を酸性から中性近くに戻す働きがあります。
顎下腺と舌下腺の位置のこともあり、下の前歯は唾液によって潤いやすくなっており、また唾液の働きによって中性になりやすい環境にあります。
そして、唾液によって下の前歯が潤う、ということは、高い再石灰化能力があることが考えられ、虫歯のなりにくさにつながっていると考えられています。
唾液は虫歯の予防や減少に大きな役割を果たしている、といっても過言ではありません。
体質的に虫歯になりやすい方がいるとするならば、何らかの理由によって唾液の問題があるという可能性も推測できます。
では、仮にそうだとした場合、具体的には唾液にどのような問題があるのでしょうか。

唾液量が他の人よりも少ない場合

元々唾液量の多くない方というのは、それだけで虫歯のリスクが他の方よりも高めである、と考えられます。
また、昨今では高齢者の方の中に、普段より服用されている薬の影響によって唾液が少ない方、というも増えています。
血圧を下げる働きのある循環器系の薬や、睡眠薬・睡眠導入剤などの向精神薬は「腺分泌抑制」という副作用が出る場合があります。
腺とは、粘膜に分泌される粘液を指しており、口の中では唾液のことを意味します。
これらのお薬を長期にわたって服用している患者さんですと、唾液の分泌量の減少から虫歯のリスクが高まっていると考えられるのです。

唾液の力が他の人よりも弱い場合

食事によってpHが下がっても、唾液の働きによって再石灰化が行われている、というのは先述しました。
しかし、この再石灰化のスピードにも当然個人差が存在します。
そのため、唾液の量だけではなく、この再石灰化の速度も関係しているのです。
食事によって低下した口腔内のpHを正常な範囲内に保とうとする唾液の機能を唾液緩衝能といいます。
この唾液緩衝能は、自律神経と密接な関係にあるといわれており、ストレスはこの唾液緩衝能に対して大きな障害になると考えられます。
そのため、ストレス社会に生きる現代人は唾液緩衝能が最大限その効果を発揮できていないということも示唆されます。
唾液緩衝能を構成する三要素のうち、最も大きな割合を占めpHを高める役割を持つる重炭酸塩システムは唾液の分泌量に依存しているため、唾液の分泌量が多いと唾液緩衝能が大きく働き、分泌量が少ないと唾液緩衝能の働きが小さくなるのです。

まとめ—唾液の働きを向上させるためには

小さい頃などに「よく噛んで食べなさい」と親御さんや先生から教わった、という方も少なくないでしょう。
唾液は咀嚼の数が多ければ多いほど分泌量が増えます。
そのため、良く食べ物を噛んで食事をすることを目標にすることによって、唾液の量を増やすことが可能となります。
ご高齢の方で、多くの薬を服用していて唾液が出にくいという場合は、顎の下の部分を揉むようにマッサージをすることで唾液が分泌される、というお話もあります。
また、お薬を服用されている場合は、担当の内科医さんとご相談を行ったうえで、副作用の小さな薬に変更してもらう、といった対策も有効です。
このように、私たちのお口の環境を整える働きを持つ唾液も、寝ているときには分泌量が大幅に低下します。
したがって、就寝前に夜食を取ったりして口腔内のpHが下がるような状況を作ってしまうと、pHが正常な範囲に回復するまでに多くの時間が必要となってしまい、結果的に虫歯発生のリスクが向上してしまう可能性が高まります。
飲料会社などの広告で、寝る前にスポーツドリンクなどのpHが下がる飲料を飲むようなシーンをご覧になったことはありませんか?
就寝前の水分補給程度ならあまり問題はありませんが、スポーツドリンクをはじめ清涼飲料水の飲用が習慣化してしまうと、虫歯予防の大きな障害となってしまいます。
pHを下げる食べ物や飲み物は、唾液が最大限に力を発揮する時間帯にのみ飲食を取ることが、虫歯予防において最も効果的なのです。

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